パーキンソン病関連疾患グループ

研究グループの概要

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名古屋市立大学神経内科では、運動学習や認知機能といった脳のネットワークや、それらの疾患と関連した変化を明らかにするために、主にパーキンソン病とその関連疾患に対して、経頭蓋磁気刺激装置(TMS)や脳機能イメージングを用いた臨床研究を推し進めています。

脳機能イメージングとは、MRIやポジトロン断層法(PET)といった臨床に用いる機器を研究に応用し、特定の脳機能を統計的に可視化する方法です。ここで、われわれの研究班が、国立長寿医療研究センターの協力を得て行った研究をご紹介します。ヒトが運動の技能を強化し獲得するうえで、小脳とともに線条体が重要な役割を果たすことが知られています。線条体では、円滑な随意運動の遂行にドパミンが重要な役割を果たしていますが、最近の動物研究で、ドパミンは運動技能の強化・獲得過程にも関与していることがわかってきました。そこでわれわれは、ヒトにおいてもドパミンが運動技能の獲得に関わるかどうかを調べるため、健常被験者さんに運動技能獲得の前後で同じ運動タスクを課し、タスク遂行中の線条体シナプス間隙におけるドパミン放出量をラクロプライドPETで定量評価しました。この研究により、線条体のドパミンは、新たな運動技能の習得時により多く放出されることが確認されました1)。このほか当科では、機能的MRI(fMRI)や拡散トラクトグラフィなどを用いた研究も推進しています。

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次に、TMSを用いた研究の展望について概説します。TMSとは、8の字型の電磁石により発生する急激な磁場の変化によって、脳内のニューロンを興奮させる非侵襲的な方法で、ヒトの脳の回路の機能や脳の活動を計測するために用いられます。これまでに、当科ではこのTMSを用いて、パーキンソン症候群(パーキンソン病・多系統萎縮症)の補助診断の新たな検査方法について研究し、成果を報告しました2) 。またTMSは、連続的に磁場を発射する反復磁気刺激の手法で脳の可塑性をもたらすことも可能で、神経疾患の患者さんへの治療手段として用いる研究も数多くされています。さらに私たちは、TMSのほか、脳の可塑性を誘導しうる経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いた研究も計画しております。

学生さんや若手医師の先生方へ。
神経内科は、病歴と診察から得られる臨床的な所見をもとに患者さんの病態を考察するという、古典的な内科の魅力とアートの奥深さがある領域です。一方、MRIや末梢神経伝道検査といった検査が診断に不可欠で、専門性の高い知識が要求されます。大学病院は、専門性の高い診療を研鑽する場であることにくわえて、研究機関としての役割を担っております。名古屋市立大学神経内科の臨床研究は未だ黎明期にあります。是非私たちとともに臨床研究を発展させましょう。

  1. Kawashima S, Ueki Y, Kato T, Matsukawa N, Mima T, Hallett M, Ito K, Ojika K Changes in striatal dopamine release associated with human motor-skill acquisition. PLoS One; 7(2): e31728,2012.
  2. Kawashima S, Ueki Y, Mima T, Fukuyama H, Ojika K, Matsukawa N: Differences in dopaminergic modulation to motor cortical plasticity between Parkinson’s disease and multiple system atrophy, Plos one 8(5): e62515, 2013.
図:
  • 上)機能的MRI(fMRI):ワーキングメモリ課題における脳賦活領域(健常者)
  • 中)拡散トラクトグラフィ:線条体〜補足運動野(赤)・運動前野(緑)・一次運動野(青)間の神経結合
  • 下)経頭蓋磁気刺激(TMS)検査の様子

メンバー紹介

  • 植木美乃
  • 川嶋将司
  • 小栗卓也